信念の対立とは、元来哲学の根本的な問題だと言えます。私たちの認識の根底にある世界観に起因する諍いを意味していると思います。そしてこの信念の対立が哲学の主たる課題になったのは、世界観の対立によって終わりなき宗教戦争と2度にわたる世界大戦の引き金となってしまったという反省があるからだと言えます。世界観というのは、人間だれしも持っているものです。従って、互いの信念が対立しあう世界観というのは疑義の余地が無いという特徴もあります。つまり「信念対立は自分にとって当たり前だと思っていることを、他者に求めてしまうあるいは押しつけてしまう・一般化しすぎてしまうことによって生じる問題」なのだと思います。一方でヘルスケアの領域に視点を変えてみると、信念の対立はチームワーク・健康問題といった文脈で取り上げられてきたようにおもいます。信念対立が生じるとチームワークの質というのは劣化していってしまいます。また、信念対立はストレス・バーンアウト症候群・作業機能障害のリスクも高め、患者に対して不信感も抱かせてしまうと考えられます。そうして治療関係を悪化させていくのです。加えてこの問題は専門家のエゴを刺激する可能性があり、患者の治療という最も重要な点が見失われてしまうのではないでしょうか。信念対立はヘルスケア領域の根本的な問題であり、処方提案を実践していくにあたり非常に深刻な足かせとなっているといえるのではないでしょうか。